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森のくまはハチミツが大好きでした
でもハチミツを食べるためには蜂たちの巣を壊さなくてはなりません

ある日蜂はくまに言いました
どうしていつも僕たちの巣を壊すんだい?中には僕たちの子供もいるのに
くまは言いました
だってハチミツをとるためじゃないかしょうがないよキミ達だって花から蜜を採るだろう?
蜂は言いました
僕たちは花から花へ花粉を届ける仕事をしてるんだそのお礼に蜜をもらってるだけだけどキミはただハチミツが舐めたいだけじゃないかハチミツなんて舐めなくっても死にはしないくせに

またある日くまが歩いているとへびがカエルを狙っているところに出くわしました
カエルはへびに言いました
どうして僕をたべるんだい?
へびは言いました
だって食べなくちゃ死んでしまうよキミ達だって虫を食べるだろう?
それじゃしょうがないねと言ってカエルは黙ってへびに食べられました

くまがしばらく眺めていると今度は大きな鳥にへびが食べられてしまいました
くまは鳥に言いました
どうしてへびを食べるんだい?
とりは言いました
だって食べなきゃ死んでしまうだろう?
そう言うと鳥は小さくガフッとゲップをすると飛び立っていきました。

またある日くまが歩いていると猟師にであいました
猟師の肩からははこのあいだへびを食べて飛んでいった鳥がだらりとぶら下がっていました
猟師はものものしくショットガンを構えるとくまに狙いをつけました
くまは猟師に言いました
どうして鳥をころしたんだい?
そりゃあもちろん食うためさ鳥の肉はうまいからな
僕もころされるのかい?
まぁそうだろうな
どうして僕をころすんだい?
猟師はいいました
猟師はくまをころすものなんだ
それじゃあ僕も食べるのかい?
くまなんて臭くて食えたもんじゃないさでも殺さなきゃキミ達は人間をおそうだろう?
僕はひとをおそったことなんて無いよ?ハチミツが大好物なんだ
これからもそうじゃないとは限らないさ
そう言うと猟師はショットガンでくまの眉間をぶち抜きました

猟師がくまの近くまで歩いていくと頭につめたいものがあたる感触がしました
振り向くとそこにはボロボロのエンジニアブーツを履いたみたこともないほどの綺麗なおんなが猟師の頭にショットガンを突きつけているところでした
猟師はたずねました
俺をころすのかい?
おんなは言いました
そう思うならそうなんじゃない?私はあなたを食べたりしないけど
それじゃなんで俺をころすんだ?
それじゃあなたはどうしてくまをころしたの?
あいつらは人を襲うじゃないか
あら?でもあのくまは人なんて襲ったことないじゃない
それでもそのうち襲うかもしれないじゃないか
あなたが人殺しじゃないって保証もないわよ?
俺は人をころしたことなんてないさ
これからもないとは言いきれないじゃない少なくとも人間になんて興味もないハチミツ好きのくまは殺したわ
それで殺すのか?

じゅうぶんでしょ?
そう言うとおんなは引き金にかるく力を入れ猟師のあたまに鉛弾をぶちこみました

天使ってのは人をころすものなのよ




ある街で声をかけられた

声をかけてきたのは小さな木製の丸椅子に腰をかけてボングを燻らす若々しくも老人にも見える男だった

『ようアミーゴお前さんは俺たちがなんでアミーゴアミーゴ言うのか知ってるかい?』

旅人は「いや、わからないよ」とだけ答えた

『例えばよアミーゴお前さんがメシも食えずに飢えちまってどうしようもねぇとするだろぅ?そんな時アミーゴが近くにいりゃぁ心の底から助けてくれるだろうが違うかい?アミーゴ』

旅人は「どうだろう?」とだけ答えた

『それによアミーゴお前さんが車にでも撥ねられて事故にあった時だって一緒さ近くにアミーゴがいてくれりゃぁすぐに病院へ運んでくれるさなぁ?アミーゴ』

「それじゃぁキミはアミーゴなんて呼んだ事もないヤツだったら助けずに放っておくのかい?」
旅人は聞きました

『そう思うかい?アミーゴ』
「思わないですね、きっとあなたはその場でこう言いますから(よう!アミーゴ!事故かい?俺に出来ることがあったらいくらでも言ってくれ)みたいな感じで」

『わかってるじゃないかアミーゴ』

「でもそうだとしたらなぜ言葉に出してアミーゴと言わなければならないんですか?言わなくてもみんなアミーゴみたいなものなのに」

男はボングを咥え大きく一吸いするときもちむせ込みながら言いました
『何も助けてもらうばっかりじゃねぇさそのうちきっと自分が困る時がやってくるんだ、そんな時の為に俺は俺のまわりにいるヤツみんなとアミーゴになりてぇんだよアミーゴ』

「僕が人殺しでもですか?」
『そうとわかりゃぁ知り合いの腕利きの弁護士でも紹介してやるよアミーゴ』
「あなたの子供を殺したとしてもですか?」
『罪は償うべきだわかるかい?アミーゴ、でもお前さんは誰も殺しちゃいねぇだろ?』

「わかりませんよ?言わないだけかもしれないじゃないですか」
『誰だって言いたくねぇコトの一つや二つあるだろうアミーゴ、それに俺には息子はおろかかみさんだっていやしねぇんだ』
「そうなんですか?」
『だからアミーゴアミーゴ言ってんだろ?アミーゴ』

男はそれからまたボングを一吸いして同じようにむせ込んだ
旅人が言った
「僕も一服いいですか?」

男はにやりと笑って言った
『一服いいかいアミーゴ?だろ?』

旅人もニコリと笑い言った
「それじゃ一服いいかい?アミーゴ」



男は旅人にボングを手渡すと嬉しそうにこう言ったんだ
「$10だよアミーゴ」








サンタクロースが死んだ夜
妖精はボロボロになるまで使い込んだサンタクロースの袋いっぱいに
流行のニンテンドーだのソニーだのなんちゃらマンだのの人形を詰め込んだんだ
特別子供が好きなわけじゃなかったんだけど
なんだかそうしたかったんだ

サンタクロースが死んだ年のクリスマスの日
妖精はトナカイをショットガンで撃ち殺したんだ
真っ赤なハナをしたそいつは幸せそうな顔をしたんだ
特別トナカイが嫌いなわけじゃなかったし
むしろ気に入ってたぐらいなんだけど
なんだか一人ってのはひどく可哀想だったからさ

サンタクロースが死んだ年のクリスマスの日
妖精は世界中の子供のうちを回ってみることにしたんだ
一晩で世界中の子供のうちを回るなんてシャブでもジャブジャブ食ってなきゃ無理だってわかってたんだけど
なんだかそうしなくちゃって思ったんだ

その年のクリスマス13番目に回った子供のうちには
病気で寝たきりの母親が一人とその母親に飲ませる薬を買うためにせっせと働く男の子が暮らしてたんだ
妖精は特別その母親が憎かったわけじゃないけど
釘バットでその母親をザクロみたいにしてやって殺してやったんだ
男の子はひとしきり泣きじゃくったあとに妖精に聞いたんだ
「どうしてこんな酷いことをするんだい?」
妖精は言ったんだ
「僕がサンタクロースだからさ」

サンタクロースが死んだ夜
妖精はサンタクロースになってみようって思ったんだ
特別サンタクロースと親しいわけじゃなかったんだけど
なんだか涙を流したから

サンタクロースが死んだ年のクリスマスの日
13軒を回った妖精はその赤い服と帽子を脱ぎ捨てたんだ
特別その仕事が嫌になったわけじゃないけど
自分には向かないって思ったんだ

家に戻ると妖精はベッドの枕元に大きな靴下をぶら下げると大きなあくびをして目を閉じたんだ

それはサンタクロースが死んだ夜




男は世界一の配達人だった
別に配達人の世界選手権にでたことがあったわけじゃないけど
男は自分が世界一の配達人だって自負してた
男はなんだって送り届けた
小さな小包も大きな小包もラヴレターもデリヘルのビッチもお取り寄せの上海蟹も結婚式のクソみたいな引き出物も出稼ぎに出たまま死んだ屈強なニガーを故郷まで送り届けたこともあった
そんなある日に男は考えた
大きくっても小包って言うのか?
すぐにそんなことを考えたって無駄だってことに気づいて考えるのをやめた
だって男の仕事は考えることじゃなくて配達だったから
考えるのは学者かシェークスピアに任せておけばいいやなんて思った
そういえばなんて男はシェークスピアの言葉を思い出した
“愛は嵐を見つめながら揺るぎもせずいつまでもしっかりと立ち続ける燈台なのだ”
いい言葉だなと思ったけど特に今関係あるわけでもなかったから忘れることにした
大昔のロマンチストの言葉より次の配達の方がよっぽど大事だった

ある日の男は小さな女の子から大きなくまのぬいぐるみを預かった
大きなくまのぬいぐるみは小さな女の子と同じくらいの大きさなのに
どうして大きなくまのぬいぐるみだと思ったんだろうなんて考えた
もしかしたら小さな女の子はホントは小さくないんじゃないかとか
くまにしては小さすぎるくらい小さいのになんて考えたけどすぐにそれもやめた
男の仕事は考えることじゃなくて配達だってことを知ってたからだ
考えるのは学者かアルバート・アインシュタインにでも任せておけばいい
そういえば彼の言葉にこんなのがあったななんて思い出した
“聖なる好奇心をもちたまえ。人生を生きる価値のあるものにするために”
特に今は関係がなかったけど聖なるってとこが気に入ったしせっかく思い出したんだから今度どこかで使おうかなんて考えた
男は小さな女の子から預かった大きなくまのぬいぐるみをグリズリーみたくファットなおばあさんに送り届けた
小さな女の子から預かった大きなくまのぬいぐるみもグリズリーの前ではやっぱり小さなくまのぬいぐるみだった

ある日の男は完全に中東の関係のヒゲのプッシャーから小さなパケを預かった
ヒゲはとても急いでいるようで13時13分に彼女の家にそれを届けて欲しいと言った
ヒゲはもちろんぶりんぶりんにキマってて男のおでこの13度上くらいを眺めながら話したもちろんろれつなんて回ってるわけもないから2割ぐらいしか聞き取れなかった
時計を見るとすでに13時9分だった
それでも男は焦らなかった世界一の配達人だったから
男が目の前の道路にそっとそのパケをおくと一台のCHOPPERがホイルスピンしながら走ってきた
焼けてドロドロになったそのタイヤはパケを貼り付けて走っていった
ヒゲの彼女のアパートの前でパケはうまい具合にタイヤから剥がれて落ちた
13時12分帰宅した彼女のヒールの底には駅で踏んづけたガムがべったりと張り付いていてパケはやっぱり張り付いた
13時13分がくると男はヒゲにしっかり届けたよと一言言ってその場をあとにした
世界一の配達人はそんな事実は知らないけれど間違いなく時間どおり配達を終えた

ある日男は友達の女の子から相談を受けた
彼にメールを出しても返事がこないの
そう言ってその女の子は酷く泣きじゃくった
男はじゃぁ僕が届けてあげるよと言うと女の子のメールを暗記した
暗記したことを忘れないように他のことは何も考えないでアホみたいな顔して彼の家に行くと
中から出てきた彼は裸で奥のベッドに寝ていたのは見るからに連続娼婦殺人事件とかがあったときに3番目ぐらいに殺されてそうな中途半端なビッチだった
男は暗記したメールの文章を伝えると玄関に立てかけてあったバットで男の頭がザクロみたいになるまで小突いてやったブタみたいに寝てたビッチがぎゃぁぎゃぁ悲鳴を上げやがったので一緒にザクロにしてゴミ袋に入れて世界一のごみ収集業者に引き渡した
世界一の配達人の男には配達したって証拠が必要だったから彼の家のドアに暗記してた彼女のメールをそのまま缶スプレーで書いておくことにした
“あんたみたいなクズ野郎とは今すぐ別れてやるわ!”
なんとなく暗記してたのとは違ったような気がしたけど世界一の配達人の男は満足そうだった

ある日の依頼は冷凍マグロだった
男は冷凍マグロって初めてみたけどミサイルみたいだななんて思ったけど
すぐにやっぱりミサイルなんてみたことがないってことに気づいた
冷凍マグロはやっぱりインド洋あたりから送られてきていて届け先はマグロなんて見たこともないって顔した連中のいるカンボジアって国だった
冷凍マグロはクソみたいななんとかってコンピューター会社をやってる資産家からの支援物資だった
カンボジアのその辺にいた女の子に冷凍マグロを渡すとその女の子は
“ミサイルみたいだね!”
と言って笑った
女の子には左足がなかったけど男が今まで見たことのある中で最高のその笑顔はそんなことも忘れさせた
女の子はお礼にと言って米が3粒だけ入ったおかゆをご馳走してくれた
男は別に腹も減っていなかったけど一息に流しこむとありがとうと言って女の子にハグをした
おかゆっていうよりは濁ったただのお湯だった

男はある日手紙を書いた
もちろん男は世界一の配達人だったからその手紙も自分で届けた
受け取った女の子は手紙を読んでたくさん泣いてそして少し笑った
男は泣いていいものなのか笑えばいいものなのかもわからなかったから
変な顔をして笑いながら泣いた竹中直人は笑いながら怒ってたなと思い出した
あの子にまた手紙を書こうそう思った
でも自分で書いて自分で配達するなら直接会ったらいいんじゃないか?なんて考えたけど
男にとっては配達することに意味があったからそんなことはホントは考えもしなかったのかもしれない

少し冷えるようになった夜男は月を眺めながら小さくため息をついた
そういえばと前に友人の言っていた言葉を思い出した
“ため息で逃げるくらいの小さな幸せはどんどん逃がせばいい大きな幸せはため息なんかでにげやしねぇさ”
男はいつもよりほんの少しだけ多めにため息をついた




昔々ある男が太陽を追いかける旅をしていました。
半年前までそばにあった太陽はみるみるうちに遠のき風に流され雲の隙間に見えなくなりました。
男はただ歩きました。

男は雲に聞きました。
『太陽はどっちへ行きましたか?』
雲は言いました。
「太陽が進むのは西だって相場が決まってる」

男はまたただ歩き出しました。
それまで太陽が沈むのが西だと思っていたのでどうやったら西を知る事ができるのか男にはほとほとわかりませんでした。

男は風に聞きました。
『西へはどうやったら行けるんでしょう?』
風は言いました。
「カラスに聞くと良い、あいつらは西へ向かうから」

男はただただ歩きました。
いつの間にか男の歩く理由はカラスを探すものになっていました。
しばらくすると真っ白い髭を生やしてこ洒落たステッキを持った老人の像の横にあるゴミ捨て場でカラスたちを見つけました。
男はカラスに聞きました。
『ねぇカラスさん、西へはどうやって行けばいいんでしょう?』
カラスは言いました。
「食事中に話しかけるんじゃねぇよ」
男はカラス達の食事が終るのを待つ事にしました。
一時間経っても二時間経ってもカラス達の食事が終る気配はありませんでした。
男はカラスに聞きました。
「お食事中申し訳ありませんカラスさん、ところでそのお食事はいつ頃おわるんでしょうか?』
カラス達は不機嫌そうに答えました。
「オマエ馬鹿にしてんのか?俺たちが食わなくなるのは死ぬときだよ」
男は驚きました。
てっきりカラス達が西への行き方を教えてくれると思っていたからです。
男は申し訳無さそうにもう一度カラス達に訪ねました。
『たびたびお食事の邪魔をして申し訳ありませんが死んでしまうまで待ってるわけにはいかないしカラスさん達が死んでしまっては西への行き方がわからなくなってしまいますので…西への行き方を教えてはいただけませんか?』
カラスはやっぱり不機嫌そうに言いました。
「チキン食うか?」
『いえ…』
「ホントはファミマのが世界一うめぇんだけどな」
『ファミマ?それは西にあるんでしょうか?』
「西だろうが東だろうが南南西だろうがどこにだってあんだろ」
『すいません…知らなかったもので、それで西へはどうやって行けばいいんでしょうか?』
カラスは首を傾げいいました。
「そんなもんは太陽について行けばいいんじゃねぇか?」
男はヤレヤレといった具合にため息をつくと言った。
『その太陽が無くなっちゃったから聞いてるんですが…』
「太陽がなくなるわけねぇだろ?」
『無くなったんです』
「じゃぁわかんねぇわ」
『!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!』
「太陽が無くなっちまったんじゃぁわかんねぇよだって俺たち太陽のあとついてってただけだし」
少年は困りました。
カラスに西への行き方を訪ねる以外に何も考えていなかったのです。
「ところでよ」
珍しくカラスの方から声をかけてきました。
「太陽がいなくなったってんなら俺たちはどこに飛んでいきゃぁ良いんだ?」
男は言いました。
『どうしてカラスさんたちは太陽のあとを追って飛んでいたんですか?』
カラスはそんな事も知らないのかといった具合に呆れた顔をすると言いました。
「そんなもん人間が起きるからに決まってんだろう?人間てのは朝起きると食い物を袋に詰めてそこらへんに投げていってくれるからな」
『なるほど、でもそれはゴミですよ?』
「ゴミってなんだよ?」
『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』
『なんでもないです…そんなことより他に西への行き方を知ってる方を知りませんか?』
カラスはそのまま回すと首が一回転してしまうんじゃないかというほどに首を傾け何かを考えているようでした。
「そんな事よりなんでそんなに西にいきてぇんだ?」
『太陽が無くなってしまったからですよ』
「太陽はなくならねぇだろ?」
男は何も返さずにカラス達の元を離れまた歩き出しました。

男は再び歩き出しました。
ただひたすらにどのくらい歩いたでしょう?そこには広い広い海が広がっていました。
『困ったな、行き止まりだ』
男は海に訪ねました。
『すいません海さん、ここは西の海でしょうか?』
海は大きな津波の口を開くと大地を振るわせるほどの大声でこういいました。
「海ってのは一つだよそんなにいくつもあってたまるもんかい!」
『それはそうだと思うんですが、どっちかっていうと西寄りだったりしませんか?』
大きな波が押し寄せ男の口の中に塩っ辛い水がたくさん入ってきました。
海はまた大きな波を立ち上げると言いました。
「あんたから見て西ってことかい?」
男は慌てて言いました。
『いえ、僕は今自分がどこにいるのかもわからないんで…』
「それじゃぁ何を基準に西だのなんだのって言やぁいいんだい?」
男は考えました。
西だの東だのって言うのは誰の目線が基準なんだろうか?やっぱり普通はみんな自分が基準なんだろうな。
『じゃぁここから西へ向かいたいんですがどっちに行ったらいいのか海さんにはわかりますか?』
「海ってのは繋がってるからね、アタシにはどっちが西か東かなんてわからないんだよ」
男は肩を落として言いました。
『そうですか…ありがとうございました』
男の背中を気の毒そうに眺めながら小さな波を立てて海が囁くように言いました。
「どうしてそんなに西へ行きたいんだい?」
男は慣れた質問に慣れた返事をしました。
『太陽がいなくなってしまったんです』
海は再び大きな波を立てると大笑いしながら言いました。
「太陽が無くなっただって?太陽がそう簡単になくなるもんかい」
男は少し機嫌を悪くしました。
そんなことは男にだってわかっている事でした。
『でも現にいなくなってしまったんですよ』
男が語尾を強めて言いました。
「そんな馬鹿な話は聞いたことがないねアタシは」
『実際僕も聞いたことがないんです…』
「どうして太陽が無くなったなんて思ってるんだい?」
男は少し考えるとこう言いました。
『いつの頃からか太陽が僕からどんどん離れていっていつの間にか昇ってこなくなってしまったんです』
「そうかい」
海は少し悲しそうな顔をして悲しそうな波をたてて言いました。
「でもね」
『なんですか?』
「さっきからずっと太陽は私を干上がらせてるしあんたの頭の上を照らしてるよ」
少年は首をグルグルと回して空を探しました。
それでもどこにも太陽は見当たりませんでした。
『僕は遊びに来たわけじゃないんです、太陽も出ていないのに海へ来るわけがないでしょう?』
海は少し落ち込み肩を落とし不機嫌そうに言った。
と、言っても海の肩なんてどこにあるのかなんてわかるはずもありませんでしたが。
「夜の海ってのもいいものなんだけどねぇ…」
「そんなことよりねアンタ、アンタがここえ来るずっと前から太陽はアンタの上を照らしてるよ、どうして太陽がいなくなったなんて思ってるんだい?」
男はしばらく考え込むと少し悲しそうな顔をしてこう言いました。
『僕の太陽はあんなクソみたいにやたらめったら照らしつけるような下世話なのとは違うんです、もっと優しくて暖くて気持ちがいいんです』
海は大きな波で頷くと「そういうことかい」と一言言いました。
「でもアンタそれなら、西に向かってるとは限らないんじゃないのかい?」
男は不思議そうな顔しながら言いました。
『だって太陽は西へ向かうものですよ?』

男はまた歩きはじめました。


ハイウェイをトップスピードで走るCHOPPERはただただ腐ったオイルとクソうるさい排気音を撒き散らした。
スピードメーターなんて下衆なもんはもちろんついていなかったので何キロで走ってるかなんてもちろんわからなかったけどとにかくそのCHOPPERのトップスピードである事に変わりはなかった。
それが30マイルだろうが180キロだろうがそんな事はどうでも良かったんだ。
男にとってはその真っ直ぐな道を真っ直ぐにトップスピードで走り抜けることが全てだったんだ。

もちろん男のCHOPPERにはクソみたいな容量のガソリンタンクしか載ってなかったもんだからすぐにガス欠になった。
男は軽く舌打ちをするとヒョイと飛び降りCHOPPERを押してハイウェイを歩く事にした。
どのぐらい歩いたのかなんて忘れたけどとにかくしばらく歩くと一件のガスステーションが見えてきた。
看板は錆落ち、入り口にはチェーンが張られ、ペプシの自販機なんてバッキバキにディスプレイが割られてたけど奥の建物には人影が見えた。
男はチェーンをふわりと飛び越えると大股でガスガスと進み勢い良くドアを開けた。
中にいたのは女だった。
10代とも30代ともとれる女の容姿はこの上ないほどやっぱり天使そのものだった。
女は言った。
『なに?』
男はそんな質問が返って来るなんて思ってもいなかったもんだから慌てて言葉がでなくなった。
『何なの?用がないなら帰ってくれる?』
「ここはガスステーションだろ?何?ってガソリンを売ってくれよ」
男が言うと女は肩をすくめヤレヤレといった具合に首を振った。
『あんたそこの鎖が見えなかったの?ここはやってないの』
「やってない?休みなのかい?」
『言ったでしょやってないものはやってないのよ、ここは私の家なんだもの』
男は少し吹きだしながら女に聞いた。
「ここに住んでるってのか?ガスステーションに?」
『そうよ、今は私の家だけど』
「ガソリンは置いてないのかい?」
女はやっぱり肩をすくめるとクスリと笑いこう言った。
『普通の女の子の家にガソリンが置いてあると思う?』
男は女を真似て肩をすくめるとこう言った。
「普通の女の子はガスステーションには住まないよ」
『そうかな?』
「そうだろ?」
二人はクスリと笑うと同時に肩をすくませた。
それから少しお互いの事をはなしたんだ。
CHOPPERのこと女の生活の事好きな食べ物好きな映画好きな色どうしてガスステーションなんかに住んでるのかってこと。
もっとも最後の質問に関しては女は答えなかったけど。

「少し喉が渇かないか?」
男は汗をぬぐいながら言った。
『外にペプシの自販機があるわ』
「壊れてるんだろ?」
『何をもって壊れてるって判断するのかは個人の自由だけど彼は元気にやってくれてるわ』
「彼?」
『ダニーって言うのよオンボロダニー』
そういうと女はエンジニアブーツの踵に引っかかったボロボロのデニムの裾を引きちぎり外へ出た。
彼女は自販機の耳元へ唇を寄せ『愛してるわダニー冷たいペプシが飲みたいの』と囁いた。
もっともペプシの自販機に耳元があるかないかなんて知ったこっちゃないけどもしあったらその辺だってだけの話さ。
その後彼女がどうしたかわかるかい?
オンボロダニーのボディをボッコボッコにこれでもかってくらい蹴り上げたんだぜ?
男はびっくりして彼女に聞いたんだ。
「もしかしてその自販機がボロボロの理由ってキミのソレが原因かい?」
『そうね私がここを買ったときは普通の自販機だったわ』
女が無邪気にそういいながらダニーを蹴り上げ続けるとダニーの口から良く冷えたペプシが二本ペッと吐き出された(ように見えた)
ダニーが気の毒になった男はダニーにコインを二枚入れペプシ(が、あったと思われる)のボタンを押してみた。
ゴトンと音をたててダニーがペプシを吐き出した。
「何だ普通に買えるんじゃないか」
男が言うと女は少し頬を赤らめながらこういった。
『そうやって使うんだ…』
「えっ?なんて言ったんだい?」
男が訪ねても女はそれ以上その件に関しては話す気がなくなったみたいだった。
『でもペプシが三本になっちゃったわ困っちゃったじゃない!』
女は意味も無く怒鳴り散らした。
「じゃぁそこにあるビアジョッキに二人で一本半ずつ分けて飲めばいいじゃないか」
男が気の利かせたことを言うと女はまた頬を赤らめながら『そうね…』と言った。
二人はまたたいしたことのない話しを続けた。
「ドクターペッパーって飲んだ事あるかい?」
『なにそれ?』
「なんだろ…炭酸飲料のKINGだよ」
『私の家の自販機はペプシしかでないからね』
「他の飲み物は?」
『飲んだ事ないわ』
「ここへ来る前はどこにいたんだい?」
『覚えてないわあなたはどこから来たの?』
「ディーゼルエンジンと音楽とロマンスの街からさ」
『素敵そうなところね…遠いの?』
「近いか遠いかなんてのはアンタの考え方次第だよ」
「アンタは毎日ここで何をしてるんだい?」
『住んでるのよ』
「何をして過ごしてるのかってことを聞いてんだよ」
女は少し考えると困った顔をしてこう言った。
『何って大したことはしてないわ、朝起きて食事をして古い映画を見てまた食事をして寝るぐらい』
「楽しいのか?それ?」
女はプッと吹きだすと肩をすくませながらこう聞いた。
『ただ暮らしているってだけなのに楽しいもクソもあるの?』
「あるだろそりゃ」
『でもあなたと話してるのは楽しいわ』
「それが毎日だったらただ暮らしてるのももっと楽しいんじゃねぇか?」
『そうかもね…』
「一緒に行くかい?あぁでもガソリンがねぇんだったわ」
『あるんじゃない?ガソリンぐらい』
そういうと女は金属バットを持ってガスガスと外の給油機のところまで行き給油機の横っ面に思いっきりバットを叩きつけた何度も何度も繰り返しバットでぶったたき続けるとホースからガソリンがゴボゴボと吐き出されたんだ。
女はくすりと笑ってこう言った。
『ほらね?ここはガスステーションよ?ガソリンがないわけないじゃない』
男はCHOPPERにガソリンをぶち込みそれでもゴボゴボとガソリンが沸いて出るもんだからそのままガスステーション全体にぶちまけてやった。
「乗りなよ」
男がそういうと女は勢い良く跨りガソリン臭い男の背中にしがみついた。
「おいおいバットはいらねぇんじゃねぇの?」
『バットはいるでしょ?何かと使えるわ』
「普通の女の子は金属バットなんか持ってねぇだろ?」
『そうかな?』
「そうだよ」
男にそういわれた女は手にギュッと握り締めていた金属バットを勢い良く放り投げた。
アスファルトにコツンと当たってはじけた火花が引火してでっかい音でガスステーションが爆発したんだ。
女は名残惜しそうに言った。
『ダニーは大丈夫かしら?』
「あんだけ蹴り上げられて平気なら大丈夫だろ?あんな爆発よりアンタのエンジニアブーツの方がよっぽど怖いさ」


ハイウェイをトップスピードで走るCHOPPERはただただ腐ったオイルとクソうるさい排気音を撒き散らした。
スピードメーターなんて下衆なもんはもちろんついていなかったので何キロで走ってるかなんてもちろんわからなかったけどとにかくそのCHOPPERのトップスピードである事に変わりはなかった。
それが30マイルだろうが180キロだろうがそんな事はどうでも良かったんだ。
二人にとってはその真っ直ぐな道を真っ直ぐにトップスピードで走り抜けることが全てだったんだ。





その晩老人のクソみたいにやれた樫の樹のベッドの足元には人間の身体に山羊の足を持った真っ赤な悪魔と白と黒のそれはそれは大きな犬が立っていた。
薄汚れた老人の住むアパートメントにはこれといって家族の写真が飾られているわけでもなく思い出の家具なんかがあるわけでもなかった。

老人は真っ赤な悪魔に訪ねた。
「俺を迎えに来たのか?」
悪魔は小首を傾げると大きな犬に意見を求めるかのような顔をして尖った角を掻いた。
老人はもう一度訪ねた。
「俺は死んだのかい?」
悪魔はめんどくさそうに床に座り込むと目を閉じ大きな欠伸をした。
思いもよらない方から声が聞こえてきた。
『クソじじいよ、そいつは俺のペットだよ』
驚いた事に口を開いたのは大きな犬の方だった。
『俺が悪魔だ、そいつは俺の従者だ』
老人があっけにとられ口をポカンと開けたままでいると犬は続けた。
『コレだから人間ってヤツは困るんだよなぁ、良いかいじいさん?犬だって猿だって豚だってみんな死ぬんだよ、犬の悪魔がいたって特に不思議はないだろう?』
「そうかもな」
老人がこぼすように言うと犬は満足気に頷き耳の後ろを後ろ足でバリバリと掻いた。
『なかなか飲み込みが早いなクソジジイ、それでだ、何をしに来たと思う?俺が』
「俺を迎えに来たんだろ?」
『ちょっと違うな、悪魔ってのはさ死神とは違うんだよ、契約だ契約悪魔といえば契約だろ?』
老人は犬の口から契約なんて言葉が出るとは夢にも思わなかったからプッと噴出した。
『何が可笑しい?』
「犬のクセに契約なんて難しい言葉知ってるなぁと思ってな」
『喰い殺すぞ?』
「子供の頃から犬は好きだよ」
老人はしゃんと座りなおし「スマンスマン」とか言いながらやっぱり可笑しそうにした。
「それで?何の契約だって?」
『何でもいいんだよあんたはどっちにしろ死ぬんだわ、俺と契約を交わさなければ今日死ぬ、俺と契約を交わせば死ぬ前に望みを一つ叶えてやる上に一週間死ぬのが延長される』
「ほぅ、なんでもか?」
『俺は悪魔だぜ?』
老人は犬のクセになんて思ったがそうは言わず少し考え込むと小首を傾げ聞いた。
「それで?オマエさんには何のメリットがあるんだい?」
『悪魔ってのは思い出を食うんだよ、あんたの思い出を食わせてもらう』
「どうせ死ぬんだろ?」
犬は振り返り赤い悪魔を鼻で小突くと言った。
『コイツと一緒だよ、思い出を食われたお前はクソ頭の悪い悪魔になるんだ、それで俺の従者になる、悪魔の一生ってのは人間のソレの100倍はあるからなその間俺の従者だ』
「ソレは嫌だな、死んでから犬のペットとして生きるのはつらいなぁ」
犬は機嫌を損ねたのか一瞬牙を剥くとまた耳の裏を掻きはじめた。
『どうすんだよ?』
「契約ってのは?」
老人が聞くと犬は赤い悪魔をたたき起こして顎で合図をした。
赤い悪魔がおもむろに一枚の丸めた羊皮紙を老人の膝元に置く。
『そこに書いてある契約内容をざっと読んで一番下に願いと名前を書いて血判を押してくれ、それだけだ簡単だろ?』
「住所も書くかね?」
『書きたきゃ書けよ』
「電話番号は?」
『電話あんのかよココ?』
「ないよ」
『・・・・じゃぁいいよ』

老人は羊皮紙を手に取るとゆっくりと時間をかけて隅々まで読んだ。
時折目をつぶって復唱したり天井を眺めて何か考え事をしてるようでもあった。

『決まったかよ?』
犬が聞いた。
「あぁ」
老人は立ち上がると伸びをして「決まったよ」と言い口角をこれでもかってくらい上げてニッカリと笑った。
『何を願う?』
「俺はさ、こんなちっちぇえ頃から今の歳になるまで変わらなかった夢があるんだよ」
『じゃぁそれにしたらいいさ』
「そう思って書こうとしたんだけどな…」
『びびったのかい?』
「いや、書こうと思ってペンを持ったんだがな、今の自分の状況をよく見たらな」
『なんだよ?』
「叶ってた」
犬は不思議そうに老人を見つめていて、その隣りで真っ赤な悪魔が床にゴロリと転がって眠りこけていた。
大きな満月の出た空はいつものソレより明るくカーテンの向こうからは目が痛くなるほどに白い光が差し込んでいた。

「もう少し付き合ってくれるかい?」




「俺はさ、子供の頃から犬と話がしてみたかったんだよ」



その日は腐った街には珍しく朝っぱらから客がひっきりなしに来た。
最初に来た少年はこんな風に言った。
「薔薇とスカルが彫りたいんです、リボンも巻いてレターも入れたいんですが」
レターなんて洒落た言い方しやがるななんて思ったんだ。
だから俺はこう言ってやったんだ。
『彫ればいいじゃねぇか』
「えっ?」
『彫りたいんですっつうからよ』
「そうなんすけど・・・」
『で?』
「え?」
とりあえずマシンの横に置いてあった金属バットでぶん殴ってやろうと思ったらもういなくなってたんだ。

二人目に来たのは女の子だった。
「ハートに矢が刺さったTATTOO入れてくれる?」
『いいよ、どこにだい?』
「場所はまだ決めてないの」
『じゃぁ何しにきたんだい?俺にTATTOOを入れるって宣言でもしに来たのかい?』
「そういうわけじゃ・・・」
『ハートは何色にする?』
「赤じゃ普通すぎるしなぁ・・・」
『決めてないのかい?』
「そうなの」
『好きな映画は?』
「タイタニック」
『なにそれ?』
「船が沈むラヴストーリーよ、知らないの?」
『しらねぇな、っつうかタイタニックくらいプランが決まったらもう一回きなよ』
「そうね」
「・・・・・・・」
『・・・・・・・』
『帰れば?』
「うん」

三人目もまた女だった。
「こんにちわ」
『いらっしゃい』
「バックがスパイダーネットで真ん中にお尻がスカルの蜘蛛、周りに星を入れたいんだけど」
『いいね』
珍しくしっかりプランが決まってる客が来たと思って俺は早速下絵を書き始めたんだ。
『こんな感じかい?』
「スカルの目の中にハートを入れられる?」
『いいよ』
『どうだい?』
「ネットはもっと細かい方が好みだわ」
『こんな感じ?』
「う〜ん」
「ネットの影もっと薄く出来る?」
『出来るよ、俺は濃い方が好きだけどな』
「星は水色にして」
『こんな感じかい?』
「その水色じゃなくってソーダキャンディみたいな色よ」
『コレくらい?』
「何か違うのよねぇ」
「やっぱりピンクにするわ」
『ピンクはどんなピンクだい?』
「ピンクにどんなもクソもある?」
『あとは?』
「やっぱり蜘蛛は辞めて黒ヒョウにしようかな」

その後どうなったかわかるかい?
もちろん俺は仕事机の下に潜ませてあったショットガンをガシャリとリロードするとその女の左耳を吹っ飛ばしてやったんだ。
女が気絶したもんだからサービスで肩に『Chopper』って彫ってやったよ。

それから9人くらい来たかな?
まぁいつもの顔ぶれだったよ。
ワンポイントをテキトーに彫ってテキトーにジョイントでも回して帰ってった。

そろそろ店じまいって頃にそいつが来たんだ。
クソきたねぇキャップ被ってディッキーズのチノパンをコレでもかってくらい腰っぱきしたやくざな男だったな。
『いらっしゃい』
「ここはTATTOO STUDIOだろ?」
『八百屋にはみえないだろ?』
「TATTOOを彫りに来たんだよ俺は」
『そうだろうな』
「早く始めろよ」
『は?』
男はそういうと瞬く間に着てきた服を剥ぎ取りベッドにうつぶせに寝たんだ。
『背中かい?』
「腹は見えねぇだろ?」
『何を彫るんだい?』
男は一度小さく舌打ちをしてぶっといジョイントに火をつけた。
「そんなもんは自分で決めろよ、あんたプロだろ?」


その晩俺は世界で一番クールでトラッドな彫り物をその背中に彫ったんだ。




“彼”は暴君と呼ばれるにはまったくもってふさわしいほどに暴虐の限りを尽くした生活を送っていた。
その界隈でアンダーグラウンドカルチャーを気取ってるヤツ等で“彼”のことを知らないなんてヤツなんているはずもなく“彼”の名が出るだけで皆が震え上がるには充分だった。
影では“彼”に対して敵対心をもつ者や陰口をたたく者も少なくはなかったけどそういう輩は決まって13日後には姿を消した。
“彼”に追われて逃げたのだと言う者もいれば、埋められただの沈められただの拍車のかかった噂が常に飛び交った。

“彼”は常に13人の女と付き合っていた。
もちろんまともな女なんて誰一人としているはずもなく13人の内12人は“彼”の事を愛してすらいなかった。
正直なところ“彼”も彼女たちを愛してなんていなかったし、彼女らの名前すらろくに憶えちゃいなかったんだ。
たった一人を除いてはね。

“彼”はとにかく人が苦手だった、彼に媚てくる輩もたくさんいたけど“彼”は誰かれ構わずもちろん殴り飛ばしジャックナイフでわき腹を刺し、当然の如く金属バットを頭から振り下ろした。

僕は昔から“彼”と親しかった。
何で知り合ったのかも忘れたし、“彼”と一緒にいなきゃいけない理由なんて特になかったし、“彼”が何を考えているかなんてのも間違っても理解する事なんて出来なかったけど“彼”との時間はとても居心地が良かったし“彼”の方もそう思ってたみたいだったんだ。

ある週の月曜日
彼はいつもみたいにクソみたいにケミカル極まりないDRUGをキメこんで街外れのDINNERを襲った。
僕が「なぜDINNERなんだい?他にも銀行にだってブランド品店にだってカジノにだっていくらでももっと金がありそうなもんじゃないか」
と聞くと“彼”は言ったんだ。
『昔見たなんちゃらって映画で言ってたんだ、これからは銀行なんか襲うのは馬鹿のすることだ、これからはDINNERだって』
「パルプ・フィクションかな?」
『あぁ、そんな感じの名前だった』
僕は“彼”のこんなトコが好きだった、とにかく“彼”は“彼”の理屈で生きていたから。
“彼”のルールは絶対だったんだ。

火曜日
13人の女の内の一人が言った。
「いい加減他の女と別れなさいよ!いつまでも私が我慢してアンタと一緒にいると思ったら大間違いなんだかんね!」
“彼”はたいして興味も無さそうにぶっといジョイントをしこたま吹かすとボソボソと言い放った。
『オマエ誰だっけ?』
“彼”はソファに立てかけてあった金属バットをめんどくさそうに振り上げると勢いよくもちろん女の頭に叩きつけた。
クチャッと鈍い音がして女の頭はザクロみたいにぱっくりと割れた。
『オマエいらねぇわ、もう』

水曜日
『水曜日は拷問の日だ』なんて突然言い出した“彼”は影で“彼”のことを
「アイツなんて実際俺にかかりゃぁ大したことねぇさ、いつかぶっ殺してやるさ」
なんて嘯いてた男を連れてきてこう聞いた。
『俺になんか言いがかりがあんなら聞くけど?』
相変わらずのボソボソとした話し方には独特の威圧感があった。
「俺には100人の仲間がいるんだ、俺が一声かけりゃぁアンタなんかすぐに潰せんだぜ?」
“彼”は不思議そうな顔をして男を眺め言った。
『100人も仲間がいて名前を覚えられるのか?俺は13人の女の名前すら満足に覚えてられないんだ、覚えてるのは13人の内一人の女と一人の友達の名位のもんだ』
そういうなり“彼”は男の右手の小指の爪を剥ぎ取った。
男は痛みに耐え切れず唸りながらもこう言い返した。
「名前なんて知ったこっちゃねぇだろうが!あいつらはただの駒なんだよ!馬鹿か?オマエ」
『仲間が100人できると世界は何かかわるのか?』
『仲間が100人できるとカンボジアから地雷がなくなるのか?』
『仲間が100人できると狼は兎を襲わなくなるのか?』
“彼”はそれ以上質問をするのにすら飽きたらしく手の指の爪っつう爪を剥ぎ取った。
それからタトゥーマシンをサプライに繋げると剥ぎ取った爪があった部分にトランプの4つの柄と13の文字を入れてやったんだ。
もちろん発狂し続けた男は小便を垂れ流しながら5分と持たずに失神したけど“彼”は気にも留めずに彫り続けた。
『出来た、案外クールじゃないかオマエ』
“彼”は相変わらず興味の無さそうなボソボソとした声でつぶやいたんだ。

木曜日
“彼”は最近巷で騒がれていた超能力者とか言われている男に出会った。
どういう経緯かはわからないけどその男と食事をする事になり僕もその席に呼ばれたんだ。
少し遅れて僕が到着すると男はすでにその超能力とやらを披露していた。
スプーンを曲げる事から始まり、グラスの中の水を溢れさせ、火のついていない煙草を一吸いすると瞬く間に煙がでて先が赤く輝いた。
僕は言った。
「でもコレってやっぱり何かトリックがあるのかい?」
男は言った。
「いや、何だかわからないけど昔からできるんだこういうコトが、でもやっぱり信じないよね」
信じないも何も目の前で起こったその事実はトリックがあるとはとても思えなかったから僕は“彼”にも聞いたんだ。
「キミはどう思う?」
『俺はさ、別にどうでもいいんだ、きっとこの目の前で起きてることは俺たちの物差し程度じゃ測れないほどの凄いことなのかもしれないけど彼がスプーンを曲げたりグラスの水を溢れさせたところでアメリカが戦争をやめるわけじゃないし絶滅した動物が生き返るわけじゃない、飛行機が突っ込んで倒壊したビルが復活するわけでもないし、パーキンソン病は相変わらず治らない、保健所に連れて行かれて毎日殺されるボーダーコリーを救えるわけでもないだろ?だから絵がうまいヤツや足の速いヤツってのと何ら大差ないじゃないか?超能力なんて』
僕は保健所で殺されるのはボーダーコリーばっかりじゃないだろうとか思いながらも
「そうだね」とだけ答えた。
超能力者の男も言った。
「そうなんだ、こんなことがいくら出来たって目の前で轢かれる子猫一匹助けられないんだ、だったらいらないよなこんな力は」
『子猫が轢かれそうなときは飛び込んで助けりゃいいだろ?何でもかんでも助けりゃいいんだ、よくテレビのアナウンサーとかがサバンナなんかで小鹿がチーターかなんかに食い殺される映像をみて言うだろ?“可哀想だけどコレが自然の摂理なんですよね、助けたりしちゃいけないんですよねぇ”とかっつってよ、俺はさ思うんだよ、助けちゃえばいいんだよ何でもかんでも、チーターなんか撃ち殺しちまえばいいじゃねぇか』
珍しく彼の話し方に熱がこもっているのに驚いたんだ。
「でもさ、お腹を空かせたチーターと小鹿どっちを助けるかってのは結構難しい問題だよね」
僕が言うと“彼”は少し考えた後こう言った。
『それは』
『そんなのはそのとき可哀想だと思った方でいいんじゃねぇか?』
「矛盾してる」
「矛盾してない?」
僕と超能力者が同時に言うと“彼”はこう言ったんだ。
『矛盾してちゃいけないなんて決まりがあるのか?』

金曜日
13人の内“彼”が唯一名前を覚えている女が“彼”に言った。
「子供が出来たみたいよ」
『誰に?』
「アタシにに決まってるでしょ?馬鹿なの?」
『俺は馬鹿なのかもしれないなぁ』
「それで?どうするの?」
『出来たもんは産みゃぁいいんじゃねぇか?』
「いいの?」
女は心底驚いたってな顔をして聞いた。
『産むなって言うと思ったのか?』
「当然そう思うでしょ?」
『俺はオマエを愛してるんだぜ?』
「知ってるわよ」
「アタシもアンタを愛してるもの」
“彼”は言ったんだ笑顔でこう言った。
『俺みたいのが二人もいたらオマエも大変だな』
「なんだ、わかってるんじゃないの」

土曜日
僕は“彼”と一緒に街をぶらついてたんだ。
彼と一緒に歩くといつもなんだけど彼は歩道に停まってるチャリンコを蹴飛ばしながら歩くんだ。
半端な蹴飛ばし方じゃないんだ、綺麗に並べて停まってるチャリンコを片っ端から車道に向かって蹴飛ばすんだから。
その日僕は聞いたんだ。
「チャリンコがそんなに嫌いかい?」
『チャリンコに好きも嫌いもないだろう』
「じゃぁなんで綺麗に並べてあるチャリンコをわざわざ蹴っ飛ばして車道に撒き散らかすんだい?」
“彼”は相も変わらず興味無さそうな顔で地面に向かって指を指した。
そこには盲人用の黄色いボコボコしたタイルが綺麗に並べられてたんだ。
「そういうコトか」
『そういうことだ』
「優しいよね意外に」
『知らなかったのか?俺は意外と優しいんだ』
「でもさ、車道を走る車は困るんじゃないかな?」
『知ったことじゃないさ』
僕はこないだ“彼”が言った言葉を思い出したんだ。
“『助けちゃえばいいんだよ何でもかんでも、そのとき可哀想だと思った方でいいんじゃねぇか?』”
「暴君だよねキミって」
そういうと彼は少し笑うんだいつも。

日曜日
12人の女と別れた“彼”は街の小さな教会でその娘と小さな結婚式を挙げたんだ。
参列者は僕だけだった。
もちろん花嫁の投げたブーケも僕が受け取ったんだ。
「おめでとう」
僕が言うと、彼は照れ笑いを浮かべて汚いチョッパーに跨ると花嫁を後ろに乗せてドクターペッパーの空き缶を13本の鎖でつないでガラガラと引きずりながら片手を上げ走り去っていった。
そのままハネムーンに出かけたんだ。
帰り道、僕は歩道に停まってるチャリンコを車道に向かってひたすらに蹴り飛ばしながら帰ったんだ。
途中こんないちゃもんをつけてくるキチガイがいた。
「そんなに車道にボンボン自転車を蹴飛ばしたら車の邪魔じゃないか!迷惑だ!」
僕は言ったんだ
「ここは目の見えねぇヤツの道だ、こんなトコにチャリンコを停めるヤツ等の方がよっぽど迷惑だろ?」
「一日に一人通るか通らないかもわかんねぇめくらの方が大事で一日に何百台も通る車は事故に遭ったって良いってのか?」
「知ったことじゃないさ」
「矛盾してる」
「矛盾してちゃいけないって決まりでもあるのかい?」
めんどくさいからそのキチガイも車道に放り投げてやったよ。
車の急ブレーキの音と“どんっ”って鈍い音が同時に聞こえた気がするけどチャリンコを蹴飛ばすのに忙しかったから大して気にしなかったんだ。

例えばさ、ニガーの若者が白人の警官にリンチされてチャカを突きつけられてたりするとするじゃんか、みんなこう思うと思うんだ。
「どっちに正義があるんだろう」とか「可哀想だけどしかたない」とかね
でもさ、助けちゃえばいいんだよそんなの。
その辺にある金属バットかなんかでさ、その警官の頭に思いっきり振り下ろしてぶっ殺しちゃえばいいんだよ。
カッコイイ暴君ってのはそういうもんさ。
考えることなんてのは大概馬鹿げてるんだよ。




“『助けちゃえばいいんだよ何でもかんでも、そのとき可哀想だと思った方でいいんじゃねぇか?』”



「いつか必ず差がでてくるさ、テキトーに悪そうにしてるヤツと真面目に悪をやってるヤツにはな」
その半分の男は13年ぶりに会った俺にそう話した。
もちろん13年前に一度会っているってことなんか覚えちゃいなかっただろうけど。


その日は朝から曇りが続いてて日が暮れる頃にはクソ冷たい雨まで降ってきやがった。
俺がいつも通りボーっと外を眺めながらぶっといジョイントを吹かしてるとそいつがびしょ濡れになって俺の店に入ってきたんだ。
もちろん13年前のあの日かっぱらっていった俺のチョッパーを店の前に横付けしてさ。
「ひでぇ雨だ、わざわざ最北のクソ田舎から来たってのにこの町の歓迎の仕方ったらねぇよな?そう思うだろ?」
一目見てその男があの半分の男だってことぐらいそのキラキラ光るフラットトップを見りゃすぐに思い出したけどそいつはまったくもって俺の事なんて覚えてないってな風だったから野暮ったらしいことは言わず話をあわせたんだ。
「昨日今日は雨が続いてるな、どこから来たんだい?」
男は裏地が豹柄のアメグラかなんかで出てきそうなびしょ濡れのファラオコートを脱ぐとバサッと水気を払いまた羽織りなおし、俺の話なんて一切耳に入ってないってな風にこう言った。
「ここらに腕の良いTattooistがいるってんで来たんだ知ってるか?」
「ここはバーガーショップだぜ?どこの国にバーガーショップの店員にTattooistの情報を聞きに来る馬鹿がいるんだい?」
「ここにいるさ」
男は上から下まで俺を眺めるとこう続けたんだ。
「ここいらの店はあらかた回ったよ、金物屋もスーパーもドラッグストアもスポーツショップもクリーニング屋も全部だ、ここらで一番堅気じゃないのはオマエだろう?他はボンボンに毛の生えたようなクソガキとクソジャンキーとビジネスライクなプッシャーぐらいしかいなかったぜ?」
「それに」
「なんだよ?」
男は店を見回すとにやりと頬を緩ませこう言ったんだ。
「堅気一人で回すにゃ店がクソ広すぎる、一人だろ?」
俺はニッコリ笑って言ったんだ。
「ウチは予約客しかとらねぇんだ、パティを焼くのも俺だしバンズも俺が一から焼くさ予約客の分だけ仕込みをしてウェイターもキャッシャーも全部俺がやってんだ」
「それにしたってだ、馬鹿に広すぎるんじゃないか?店が」
その町にある俺の店はキャパが300は入れるだろうってな大箱だったんだ。
「あんたハンバーガーなめてんのか?こじんまりした店なんかでクソデカイワッパーが食えっかよ?ワッパーってのはよ、こう両肘突き出してよ、チョーパンかますぐらいの勢いで頭っから齧り付くもんだろうが!狭いバーガーショップなんてのは旨い不味い以前の問題だぜ?」
「確かにそうだな」
「それで?食うかい?ウチのワッパー」
「残念ながら予約はしてないんだがね」
「してあるさ13年も前からずっとな」
俺は厨房へ回るとすぐさまクソでかいパティを13枚焼いたんだ。
トマトを薄くスライスしてレタスは気持ち程度13枚のクソでかいパティには一枚ずつチーズを乗せて蓋をして少しだけ蒸らすんだ。
ピクルスを薄くスライスして入れるなんて野暮なことはもちろんしないさ。
ぶっといまんま横にそっと添えてやった。
ソース?ソースなんざ必要ないね、テーブルの上にHein`Sのケチャップがあるだろ?
好きなだけ好みの量をかけたらいいじゃねぇか。
もちろんジューシーな肉汁だけで食うのもいいよ、俺のパティにはロマンスとしっかりとした味付けがしてあるからな。
飽きたら例のアレをかけると良い、French`Sのマスタードだな。
アレはいける、何にだって合うさ。
どれだけでかかろうが食いづらかろうがナイフで切ろうなんて思うなよ。
まぁそれ以前にウチにはナイフもフォークも置いてないがね。

俺はそんなことをぶつくさとつぶやきながら全ての工程を13分でやりあげた。
きっちり13分だ。
12分でも14分でも駄目なんだ。
この半分の男にはね。

「食えよ」
男の前に13個のワッパーと特大サイズのセブンアップをどっかりと置いてやった。
「きっちり13分だな」
男が嬉しそうに言う。
「13個のワッパーをやりあげるには最適の時間だろ?」
「セブンアップも充分すぎるな、俺は昔よくコレで苦労したもんだ、ワッパー13個に金払ったらSサイズしか買えなかったりな、時にはドリンクなしって事もあったさ」
「知ってるさ」
「俺の何を知ってる?」
「俺はオマエのワッパーの食い方を知ってるさ、それ以外に何が必要なんだい?」
「それにオマエが乗ってきたチョッパーが何年式の何でジェットの番手も何番かなんてこともみんな知ってるぜ」
「あぁ、あん時のオマエか」
「思い出したかよ?」
「知ってたさ」
「嘘言えよ」

半分の男は俺の話を聞いてんのか聞いてねぇのかわかんないうちに綺麗さっぱりワッパーを平らげてたんだ。
その食い方っつったら13年前一つも変わりなくクソ汚かったさ。
手なんざ殺人犯かってくらいケチャップまみれで顔に至っちゃ下半分がピエロみてぇにまっ黄色でところどころにケチャップと肉汁の色が混じってその顔っつったらまったくもっての豹柄そのものだった。

「パティの味が濃過ぎる、バンズに胡麻なんかふるな、トマトも薄すぎるし最近はアヴォガドが好みなんだ」
「全部平らげといてその言い草はないだろう?」
「いいだろ?オマエはプロじゃないんだからよ」
「知ってたのか?」
「はじめっからな」
「そうか、奥がスタジオになってんだ、今からやるかい?」
「当たり前だ、俺はワッパーを食いに来たわけじゃねぇんだからな」
「フラッシュは上がってるよ」
「13年もあったからな、そりゃぁ出来てなきゃ困る」
俺が描き上げたその男のためのフラッシュはメリケンサックと血の滴り落ちる真っ赤な薔薇だったんだ。
「なんでメリケンなんだ?」
「メリケン以外に何があるってんだ?最強のウエポンだぜ?」
「釘バットよりもか?」
「あんなもんは下衆の持つ上品な道具にすぎないさ」
「ショットガンはどうだ?」
「造形が綺麗すぎる、あんなもん振り回しても許されんのは天使くらいのもんだよ」
「薔薇に棘はないのか?蔦すらない」
「棘のない薔薇ほどおっかねぇものはねぇだろ?とっておきってのは隠しとくもんだ、チャラチャラあぶねぇもんをひけらかしてるヤツほど大したヤツじゃぁねぇのさ」
「メッセージが最高だ」
「あぁ、それ以外にゃ思いつかなかったよ」
「はじめようか?」
「煙草を一本吸わしてくれよなんせ入れるのは10年ぶりなんだ」
「そりゃぁいいけどよ、あんたが咥えてんのって煙草じゃなくてジョイントだろ?」
「問題でも?」
「まわせよ俺にも」


施術をはじめると半分の男は尋常じゃないほどに痛がったから資料用に用意してあったメリケンを男のテンプルに叩き込んでやった。
「麻酔だよ、優しいな俺って」
おとなしくなったからチャッチャと彫り上げてやったんだ。

途中目を覚ました男が言った。
「そのマシンまだ使ってんのか?」
「あぁ、あんたが初めて組み上げたマシンだろ?世界一のマシンさ」
「それな…」
「なんだ?」
「間違ってた、それアムステルダムで買い付けてきたヤツだったわ」
「!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
「まじで!?」

そのあとの話なんてしなくたってわかるだろ?
俺はそいつの頭がザクロみてぇになるまでメリケンで殴りつけたやったさ。
クッチャクチャになった頭ん中に生のパティをコレでもかってくらい詰め込んでやった。
それで最後に仕上げでこう彫ったんだ。

“NO ANGEL、NO LIFE”

翌朝頭にパティをぎっしり詰め込んだ半分の男が目を覚ましてこう言ったんだ。
「クラッシュのジョーストラマーはこう言ってたじゃねぇか」
「“オマエ達は支配されてんのか?それとも命令してんのか?オマエ達は前進してんか?それとも後退してんのか?”って」
俺はちょっと後悔したよ、少しパティを詰め込みすぎたみたいだ。
男はこう続けたんだ。
「俺やオマエがその気になれば砂漠に雪を降らすことだって空を海にすることだってできるんだぜ?」

「アンタ明らかにジョイントの食いすぎだよ」
俺は言ったけど心の中ではしっかりと頷いてたんだ。
俺やコイツが本気になったら本当に砂漠に雪を降らすことぐらいできる気がしたんだ。

朝からゴキゲンにクソぶっといジョイントを巻いてさゴキゲンに唾を吐いて笑ったよ久々に。



“13Whoppers”


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